新堀俊明先生
元TBSアナウンサーの新堀俊明さんが亡くなりました。
新堀さんは私にとっては大学の先生で、私の人生を大きく変えるきっかけを作った方です。
というのも、30年くらい前、日本大学芸術学部放送学科に入学した私は、短絡的というか単純というか、「せっかく”日芸”に来たんだからアナウンサーになろう」と思い(当時の日芸は、中井美穂さんをはじめ、毎年卒業生がキー局のアナウンサーになっていました)、すぐにアナウンス実習担当の教官室に向かいました。
するとそこには、当時サンデーモーニングに出演されていた新堀先生が、二年生担当の特別講師としておられたのです。
「アナウンサーになるにはどうすればいいでしょうか? どんな大学生活を送れば良いですか?」と聞く私に、新堀先生は一言、「あのね、アナウンサーになりたい子って、いっぱいいるんだけどさ。TBSも、毎年何千人もアナウンサー採用試験の受験者がいるんだけど……プロからしたら、大学時代に放送研究会とかに入って、アナウンサーっぽいことやってる学生が一番気持ち悪いんだよね。だから君は、アナウンサーと全然違うことに打ち込みなさい。4年後、俺は大学時代に〇〇をやったと、胸を張れるようにしなさい」と。
(俺は日芸に何しにきたんじゃ)と少々面食らいましたが、新堀先生の言葉を信じて、大学時代はミュージカルとオートバイ、アルバイトに打ち込みました。授業は、まあ、そこそこ頑張り……(汗)。でも、あまり出席できなかった授業でも(すみません)、自分が書いた戯曲を教授に見せたら「優」を頂いたりして、最終的には結構いい成績で卒業しましたので、当時の日芸は芸術大学らしい、包容力のある場所だったと思います。
そして結果として、新堀先生の言葉通り、私はアナウンサーとなりました。大学時代に経験したことは全て、今の仕事にも、小説執筆にも役立っています。新堀先生、本当にありがとうございました。どうぞ安らかにお眠りください。